2017年1月20日金曜日

家庭学習の主役は「宿題」 学習塾は必要なし


  世界に名だたる大学が軒を連ねるボストンから約10キロ離れた郊外にある街Arlington
ボストンという都会に近いながらも自然が多く、MITやハーバード大学が集まる街Cambridge、日本の皇太子妃が育たれた街として有名なBelmont、アメリカの歴史がはじまった街Lexington に囲まれる。

 近年、幼い子供を持つ親、ましてはミレニアム世代とよばれる高学歴、高所得の若い世代の住宅購入希望が多い街として有名だが、以前は中間層がくらし、古き良きアメリカの雰囲気が残る小さな街Arlington で、著者は子ども達3人を育てながら、街の公立小学校に、保護者として18年間かかわるという経験をしている。「学習塾は必要なし」などと書いたが、課外学習がおろそかにされている訳ではない。しかも、この街近郊に日本のような学習塾が存在しないという訳でもない。
日本でも有名な塾がこの街にも存在する。
 私のまわりの子ども達でも通っている話を聞かなくもないが、其れは小数派だ。実際我が家に出入りしてた長男の友人達は、誰一人かよっていなかった。しかし彼らはそれぞれに現役で希望する大学に合格し、まさに今年、社会人としての一歩を踏み出そうとしている。
 そんな子育ての中で感じた「宿題」の位置づけについてお伝えしたい。

アメリカの大学受験は、学力だけで評価される訳ではない。課外活動などにも大きな比重がおかれる。
そのために様々なスポーツに励んで成績をのこしたり、シンフォニーなどの音楽活動、バレエや絵画などの芸術活動やスカウト活動などの慈善活動に参加する子ども達も多い。子ども達の放課後はそれぞれに多忙だ。

例えば世界的に有名なボストンバレエ団。そのバレエ学校に通う子ども達の中で、13歳から挑戦することができるプロへの登竜門のコース。
そのコースに通う為には週に6日間バレエ学校に通わなくてはならず、平均でも毎日3時間半のレッスン、週に最低でもトータルして、18時間から23時間以上の練習を求められる。
もちろんそのコースに通えるようになる為には、オーデションに受からなくてはならない。其れ故に10歳の子ども達であっても、週に3回、一時間半のレッスンを受ける。ほかにもとらなくてはならないクラスもあり、ほとんど放課後はバレエ三昧だ。そんな子ども達にとっては、日本のような学習塾に通うような余裕はない。

私も夫も、この国で育ってはいない。
子供を育てるにあたってどうすればよいのか、その都度 学校の先生方の助言を受けた。そのときにいつも言われたことは、学校からの宿題をきちんと提出してほしい、その一点だけであった。
そして、今、それぞれに道をみいだしている子ども達をみても、学校からの宿題を丁寧に取り組む姿勢それこそが、「学習塾」に頼ることのない学習環境を生み出すのではないかと思っている。

そんな宿題の一例を紹介したい。
例えば小学生が歴史上の人物を学習するとき、まず、学習する時代の中で、自分が興味がある人物を選ぶ。
其れが、まず、第一段階の宿題だ。
先生とも相談したり、家族との話題のなかで自分が掘り下げたい人物を選ぶ。
そしてその人物についての本を、少なくとも3冊以上読むことが宿題になる。
次は、その人について掘り下げたリポートを書くのが宿題だ。
リポートを書くためには、インターネットを使ってのリサーチはもちろん、歴史上、この土地であったことであれば、その場所での取材などが求められる。
そしてそのリポートを書きながら、プレゼンテーションに向けての資料の作成がある。プレゼンテーションボードを使って、小学生であってもなかなか本格的な資料作りだ。
そして発表の日。可能であれば、その人物になりきって発表するというオプションがある。我が家の子ども達もカツラまでかぶって楽しんでいた。
こんな大掛かりな宿題を、2、3ヶ月ぐらいの時間をかけて仕上げる。
そして、其の題材は多岐にわたる。
楽器を作る宿題であったり、石について学ぶような理科系の宿題であることも多い。一つひとつの課題に真面目に取り組んでいたら、たいへん時間がかかる宿題であり、学習効果も高いはずである。

毎日の宿題は本読み、ブログ作り、そして、週に一度ぐらいの提出期限で出る算数の宿題。そんな小さなものだが、この大きな宿題をこなす為の提出期限がそれぞれにあり、子ども達は小学校低学年であっても、タイムマネジメントの練習をしているのだ。


 教育というものは一つの正解がある訳でもなく、日本と同じようにアメリカもまた、試行錯誤をいつも繰り返している。しかし時間を自らやりくりし、目標を立てて主体的に学習する。スポーツでも、芸術活動でもやりたいことを見つけたら、その目標を達成する為に主体的に努力する。こんな軸がこの国の教育環境にあるからこそ、子ども達はそれぞれに道を切り開いていくのではないだろうか。


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